南禅寺方丈庭園 なんぜんじほうじょうていえん
美しい杮葺きの棟に映える禅院式枯山水庭園
庭の概要
所在地 | 左京区南禅寺福地町 |
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電話 | 075-771-0365 |
作庭年代 | 江戸時代前期 |
作庭者 | |
様式 | 枯山水 |
寺社の創建年代 | |
文化財指定・登録状況 | |
敷地面積 | 約1,200㎡ |
公開状況 | 公開(有料500円) |
歴史・いわれ
南禅寺は京都の文化ゾーンでもある岡崎にあり、緑豊かな広い境内には壮大な伽藍【がらん】や数多くの塔頭【たっちゅう】寺院、明治の遺産・水路閣【すいろかく】等が点在し、訪れる人が絶えません。
室町時代には五山文学の中心として栄えましたが、応仁の乱などで建物は全て焼失し、その後江戸時代以降に再建されたものです。
東山を背景に勅使門、三門、法堂【はっとう】、方丈が一直線に西へ向き、京の町を見守っているようにも思えます。勅使門から東へ進んでいくと頭上を覆っていた緑陰の間から石川五右衛門の台詞「絶景かな」で有名な三門が見えてきて、近づくにつれ仰ぎ見る様な大きさとなり、通り抜ける際には柱の太さに驚かされます。
一番奥にある方丈は1611(慶長11)年に御所の建物を拝領再建した大方丈と伏見城の小書院を移設した小方丈が接続された美しい柿葺きの棟を持つ建物で、1953(昭和28)年には国宝に指定されています。
小堀遠州により作庭されたと伝えられている方丈の南庭は、何時の頃からか「虎の子渡しの庭」とも言われる国指定の名勝庭園です。桃山時代の豪壮な立石組と違う伏せた石組が虎の姿を思わせるのかもしれません。
しかし広縁に座して庭を眺めていると、大海のかなたの理想郷のようにも見えてきます。築地塀で水平線を強調させ、羊角嶺【ようかくれい】(大日山)を借景として取り込んだ枯山水庭園です。東西に細長い敷地の右手と広縁側は大きく白川砂利の砂紋が描かれており、左手奥の巨石の石組と植栽に目を引き付けられ、浮世絵に描かれた水紋や花霞【はながすみ】の中に現出した美しい仙境のように感じられます。
江戸時代後期の都林泉名勝図会【みやこりんせんめいしょうずえ】では背後に建物はなく山のふもとに霞【かすみ】が描かれており、※1「奇石巨巌砠て雲夢七澤を開くの仙境なり」と説明されています。後の世にできたであろう背景の大玄関と庫裏【くり】の大屋根もこの霞のラインが踏襲されているようです。
庭の見立ては人それぞれ。どの石が親虎か小虎かと見るのも良いですが、こだわりを捨て、その時の光や風、季節の風情を感じながら楽しめればいいのではないでしょうか。