妙心寺退蔵院 方丈庭園、余香苑 たいぞういん ほうじょうていえん、よこうえん
庭の概要
所在地 | 京都市京都市右京区花園妙心寺町 |
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電話 | 075-463-2855 |
作庭年代 | 方丈庭園:本文参照 余香苑:昭和40年(1965年) |
作庭者 | 方丈庭園:本文参照 余香苑:中根金作 |
様式 | 方丈庭園:枯山水 余香苑:池泉式 |
寺社の創建年代 | |
文化財指定・登録状況 | 方丈庭園は国の名勝・史跡 |
敷地面積 | 方丈庭園:約400㎡ 余香苑:約2,600㎡ |
公開状況 | 公開(有料) |
歴史・いわれ
妙心寺(みょうしんじ)は、臨済宗妙心寺派大本山の寺院です。退蔵院は妙心寺の塔頭で、妙心寺第3世無因和尚を開基として、応永11年(1404年)に開かれました。最初は妙心寺の外に所在していましたが、のちに場所を妙心寺山内に移し、さらに山内を移転して16世紀に現在地に境内が定まりました。
現在境内には、江戸時代の庭園と考えられる方丈庭園と昭和40年(1965年)に新しく作られた「余香苑」の2つの庭があります。
方丈庭園は、方丈の西と南に広がる枯山水の庭です。とくに西側部分は室町時代の絵師で、狩野派の絵画様式の確立者といわれる狩野元信の作であると伝えられ、「元信の庭」と呼ばれています。元信は同じ塔頭・霊雲院の障壁画も描くなど、狩野派と妙心寺は深い関係にありました。
ただし、現在の方丈は慶長7年(1602年)に建てられたもので、それ以前に方丈が建っていたかははっきりとわかっていないため、庭園の創建についてはまだ詳しい検討が必要なようです。
もう1つの庭、「余香苑」の敷地は、方丈庭園裏の背景となっていた竹林でした。しかし、この竹林が寿命を迎えて一斉に枯死したため、現代にふさわしい新たな空間をつくろうと作庭されました。
余香苑は昭和38~40年(1963~65年)にかけて、造園家・庭園研究家として名高かった中根金作氏の設計・施工で作られました。敷地に入って左右にそれぞれ「陽の庭」・「陰の庭」と名づけられた枯山水の庭があります。さらに進んで、水琴窟のある蹲踞(つくばい)の脇を通って小坂を下り、最も低い位置にある藤棚付近から振り返ると、流れ・池を含む庭の全景が見渡せるようになっています。
見所・みどりの情報
方丈庭園
方丈の西南角には手水鉢が据えられ、縁先を回る通路をさえぎり、庭を西側(元信の庭)と南側に分ける形式となっています。現在は管理上の理由から、この手水鉢付近から西側の庭を見ることになります。南側の庭は杉苔が敷かれ、特に造作はされていません。
方丈庭園の西側部分は比較的こじんまりとした枯山水です。宇多野・衣笠の黄褐色の山石、灰色の御影石、四国の青色など、色合いのはっきりした石を各所に据え、しっかりと石組されており、絵画のように、非常にまとまりのある構成となっています。
白砂全体を枯池とし、中島を設けて石橋でつないでいますが、中島の左手に、魚が背びれを見せて泳ぐ姿を思わせる「鮒石(ふないし)」があります。江戸時代にこの庭を詠んだ無著道忠禅師の漢詩にも記されている石組で、比較的間の空いた白砂部分をひきしめる効果を果たしています。
植物は低木の刈り込みのほかはツバキ、クロガネモチ、アラカシ、モッコクなど常緑樹が多く植えられています。
西側の庭の北、方丈裏の書院の一隅に「囲いの席」と呼ばれる隠し茶席があります。妙心寺では茶道が修行の妨げになると考えられ、長く禁じられていましたが、江戸時代の初期、茶道に執心していた第6世千山和尚が密かに作ったといわれています。茶庭に付き物の木戸(中くぐり)の代わりに井戸屋形がありますが、茶席に躙口(にじりぐち)はなく、外から見てもそれとわからないように作られています。(「囲いの席」は特別公開されることがあります)。
余香苑
庭は中央奥の大きな滝石組からの流れに続く池庭で、片側はサツキ・ツツジの刈り込みで覆われ、またサクラやモミジ・キンモクセイが植えられています。
池の護岸の石はやや低めで、刈り込みとあいまって軽快な感じの庭になっています。それでも、伝統的な技術も盛り込まれ、とくに滝石組は方丈の庭の枯滝石組のイメージで作ったものといわれています。
大きなシダレザクラを眺めることができる茶屋や藤棚が設けられ、くつろぐこともできます。余香苑は江戸時代までの禅宗の庭にはない、軽快さ・軽妙さを持つ新しいタイプの庭として、とくに春・秋には目を楽しませてくれます。
手入れのポイント
方丈庭園はうっそうとしていた背景の竹林が枯死し、伐採されたあとは、庭はかなり明るくなりました。日当たりが良くなったため、少し乾燥しやすくなったようで、以前よりも庭の木々が多く水を欲しがるようになったそうです。
文化財の指定/関連の文化財
退蔵院方丈庭園は、昭和6年(1931年)、国の名勝・史跡に指定されています。
妙心寺本山の妙心寺前庭と方丈庭園、塔頭の霊雲院の枯山水庭園、杉苔とツツジの植え込みが見どころの桂春院庭園は、いずれも国の名勝・史跡に指定されています。
退蔵院は、日本の漢画の祖ともいわれる禅僧、如拙(じょせつ)が、足利3代義満または4代義持の命により描いたと伝わる『瓢鮎図(ひょうねんず)』を所有。室町時代の水墨画の傑作とされる国宝で、現在は京都国立博物館に寄託されています。
引用・参考文献・資料提供
【引用・参考文献】・誠文堂新光社、京都名園記(中)、久恒秀治、1968
・重要文化財退蔵院本堂附玄関修理工事報告書、1974、京都府教育委員会
・日本庭園歴覧辞典、重森三玲、1974、東京堂
・日本庭園史大系 第6巻 室町の庭(2)、 重森三玲・重森完途、1974、社会思想社
・集成 日本の古庭園(下)、岡崎文彬、1985、同朋舎
・日本史小百科19庭園第3版、森蘊、1990、近藤出版社
・中根金作京都名庭百選、中根金作、1999、淡交社
【取材協力および資料提供】
退蔵院
(株)中根庭園研究所
周辺マップ
見学のガイド
退蔵院の概要と庭園の紹介ページ