歴史を語る京の木
復活の老樹 京都御幸町(ごこまち)教会のザクロ

賑わう御池通から御幸町通を北へ。しばらく進むとレンガ造りの小さな教会堂が見えてくる。この京都御幸町教会は、キリスト教の伝道師でもある建築家のウィリアム・M・ヴォーリズの設計により、1913(大正2)年に建てられた。ゴシック様式を基調とする、歴史と温かみが感じられる建物は、来年100周年を迎える。
教会の前庭には、樹齢70年を超えるザクロの木が立つ。現在は蒼々たる葉を茂らせて立つこのザクロも、教会堂の耐震工事が検討された際には枯木状態になっており、そのまま伐り倒される運命にあったという。ところが工事の前年、1997年に甦生(そせい)し、場所を少し移して生きながらえることとなった。今でも教会堂側から幹をのぞくと、生々しい傷跡とともに治療の跡を見ることができる。
古くからお住まいの近所のご老人の中には、幼いころにザクロに登って遊んだという方もいる。この木が教会堂の前にあり続けることが、町の大きな安らぎとなっている。
古来、ザクロは復活の象徴、子宝の吉木として多くの人に敬われてきた。一度は倒れながらも復活を遂げたこの老樹の根元から、新しく数本の若木が育っている。
秋には鳥も手を出さないほどの硬い殻に包まれた、こぶし大の果実をたわわにつける。来る実りの季節に向けて、鮮紅の花を咲かせる夏。青葉との美しいコントラストが、訪れる人の目を大いに楽しませてくれる。
●京都御幸町教会
京都市中京区御幸町通
二条下る山本町434
☎075-231-3441
主日礼拝:毎週日曜日10:30~
地下鉄東西線
「京都市役所前駅」下車、
徒歩約5分
*この記事は2012年7月発行の「京のみどり63号」から内容を掲載しています。
冊子は協会事務所(東山区円山町463)でお配りしています。