新しい緑の世界へ 挑戦する人
岡部達平さん・「ゴミ」を資源にかえる人(京都市中京区)
「さまざまな出会いに導かれて環境にかかわるようになりました。」
●ゴミから生まれたピンホールカメラ
大学生の時に写真家として修業をしていたころは、カメラはまだフィルムが主流の時代でした。一枚のポスター写真をとるために、何千枚の写真をとり、スタジオのゴミ箱はフィルムなどのゴミでいっぱい。それを見て何だかとても嫌な気持ちに...。ゴミを利用できないものかと思って調べてみると、カメラの元祖であるピンホールカメラをつくれることがわかりました。
建築廃材や空き缶なども使い、試行錯誤の後、ピンホールカメラが完成。でもプロの写真の世界からは、そんなカメラで人を感動させる写真が撮れるわけがない、と全く評価をされず、どんどん自信がなくなりました。
状況が変わったのは、環境保護活動家としても知られるアメリカのアウトドアウェアメーカーの副社長リック・リッジウェイ氏との出会いでした。初めて、このカメラを認めてもらえたのです。
自信を取り戻し、ワークショップや写真展を開くようになりました。新聞にも取り上げられ、記事を見た小学校の時の担任の先生が連絡をくれました。捨てずに工夫をすれば写真もとれる、ゴミには可能性があることを、子どもたちに伝える授業をしてくれないか。こうして小学校や中学校でエコ授業をするようになりました。
授業ではデジカメとピンホールカメラで撮影をして便利なのはどっち?と聞きます。子どもたちの答えはもちろんデジカメ。ピンホールカメラは撮影時間もかかり、自分の思い通りにはなりません。でもこの不便なカメラにしか撮れないものがあります。それは太陽です。目で見ることもレンズを通しても見ることができない太陽を唯一写して見ることができるのです。撮影した空と太陽の写真を見せると、子どもたちは不便な中にも大切なことがあるということや、何気ない自然の美しさに気づいてくれます。
●私が大きくなるまで地球はまってくれますか?
京都市立清水小学校で授業をしたときのことです。「先生の実践しているエコはなんですか?」と質問を受けました。移動には自転車や公共交通機関を使う、水筒を持ち歩く、そして、何度もリサイクルできる服を着ていますと言いました。
授業のあと、女の子が駆け寄ってきてくれて、「私も永遠に捨てない服が着たい。大人になったら(お金を貯めて)買います。でも大人になるまでの10年、地球はまってくれますか?」と。大丈夫だよと言うことはできませんでした。そのかわりに、学校でみんなが一緒にものを大切にできる場をつくってあげたい、そう思って始めたのが「体操服!いってらっしゃい、おかえりなさい」プロジェクトです。
プロジェクトは、成長時や卒業時に不必要になった体操服を回収し、リサイクルして新しい体操服をつくるというもの。重要なのはこのリサイクルが半永久的に可能だということです。一度きりのリサイクルやリユースは、地球を主体に考えると、あまり意味がありません。何度もリサイクルでき、最終的にゴミを生まないことが大切です。
仕組みづくりには、生地づくりから、商品開発、流通にいたるまで、多くの方の協力が必要でした。学校の先生や保護者の方が、この体操服を望んでくれたことが大きな原動力となり、2010年4月、ついに日本で初めて、リサイクルできる体操服が京都市立御所南小学校で採用され、1年生を対象に導入されました。
●ものを大切にすることが環境によいことにつながる
今年の4月にはその子どもたちが体が大きくなる3年生になり、初めての回収が始まります。
プロジェクトの目的は、みんなで力を合わせてものを大切にする機会をつくること。そこで先生には、回収は手渡しでとお願いしています。よく頑張ったね、と声をかけてもらうことで、子どもたちは、ものを大切にできたことを実感でき、自信につながります。その結果がリサイクルという環境によいことにつながっています。
ものを大切にすることから、節電や節水など自然を大切にする取組へ、そして保護者の方も交えて広がっていくとうれしいですね。
*この記事は2012年3月発行の「京のみどり62号」から内容を掲載しています。
冊子は協会事務所(東山区円山町463)でお配りしています。