歴史を語る京の木
橋本関雪が残した 白沙村荘(はくさそんそう)のハクショウ
銀閣寺のほど近くに、日本画家・橋本関雪の元邸宅であり、現在は記念館として公開されている白沙村荘がある。門をくぐると、そこには関雪が30年もの歳月をかけて、こだわりぬき、つくりあげた空間が広がっている。
関雪の画室であった存古楼(ぞんころう)を中心に広がる庭園は、その独自の美しさから2003年、国の名勝に指定された。庭園の東部分を占め、穏やかに水を湛(たた)える芙蓉池(ふようち)の周囲には、多種多様な植物が息づいている。その中に、細身の幹や枝が、やわらかな樹形をつくり涼しげな佇(たたず)まいを見せるハクショウ(白松)がある。中国原産で、マツ科マツ属。葉が3本ずつ付くのが大きな特徴で、樹肌はまだら模様。樹皮ははがれやすい。京都市内でも数か所でしか見ることができない珍しい木である。
関雪が、昭和初期に中国より持ち帰った2本の苗を植えたものが最初といわれ、現在5mほどに育ったこの木は、その子孫という。当初の2本も、数年前まで存古楼の前で存在感を放っていたが、同時に枯れてしまった。驚くほど出ていたという松やにが固まり、樹脂となったものが切り株に残り、まだその面影を感じさせる。ハクショウの生態はあまり知られておらず、管理が難しいという。
敷地には、3、4年前より不思議とハクショウの実生が何本も育ち始めた。アカマツ等に比べて成長が遅く、ゆっくりと成長を続けながら、やがて美しい景観の一端を担っていく。
●白沙村荘
橋本関雪記念館
☎075-751-0446
京都市左京区浄土寺石橋町37
10:00〜17:00(最終入館〜16:30)
一般800円 学生500円
市バス「銀閣寺前」下車、徒歩すぐ
*この記事は2011年7月発行の「京のみどり59号」から内容を掲載しています。
冊子は協会事務所(東山区円山町463)でお配りしています。