Q51~Q52 回答:太田周作 相談員
- Q51. <シマサルスベリ> 梅小路公園の入口近くに、幹や葉、花の形も「サルスベリ」によく似た大きい木が数本並んでいますが、なんという木ですか?
- この植物はミソハギ科で、サルスベリ属(ラジェルストレーミア、以下「L.」と略)の落葉高木ですが、「サルスベリ(L.インディカ)」とは、種(しゅ)が異なり、「シマサルスベリ(L.スブコスタタ)」といいます。自生地は、日本では沖縄県や奄美大島が中心で、北限地は屋久島と種子島です。また国外では台湾に分布します。
一方、「サルスベリ」は、中国南部の原産で、日本への初渡来の時期は不明ですが、すでに江戸時代には庭木として利用されていました。「サルスベリ」は世界の熱帯から温帯まで広く植栽され、現在多数の園芸品種があります。大きさも、超小型の「一才サルスベリ」から7mになるものまで幅があり、樹形も直立性や枝垂れ性、低木状など多岐にわたります。花色も赤、桃、紫、白や複色花など様々で、7~9月の間、花を咲かせ続けます。これが別名「百日紅(ひゃくじつこう)」と呼ばれる由縁なのです。
「シマサルスベリ」が利用されだしたのは高度成長期に入ってからで、主に公園樹や街路樹として使われ、樹形と幹肌の美しいのが特徴です。「サルスベリ」より大型で、直立し、生長は速く、高さは10m以上にもなります。花はたくさん着くものの、一輪ずつは小さく、花色は白がほとんどです。花期は7~8月で、「サルスベリ」の半分くらいの長さです。「サルスベリ」との交配種(L.×フォーリエイ)もあって、園芸品種がいくつかあります。交配の主たるねらいは「サルスベリ」の弱点であるウドンコ病への耐病性を強めることです。
なお、「シマサルスベリ」の植栽は、北海道と東北を除く、他の地方の平地なら十分可能です。
- <写真>
シマサルスベリの開花(8月、梅小路公園)
シマサルスベリの幹の皮がはがれている状態(梅小路公園)
シマサルスベリの円椎花序(8月、梅小路公園)
サルスベリ(9月、梅小路公園「緑の館」)
種子をまくと1年で花を着ける「1才サルスベリ」。主に鉢植え用(7月)
サルスベリとシマサルスベリの交配種L.×フォーリエイ'マスコギー'(8月)
- Q52. 園芸書を見ると「ノウゼンカズラ」の種類が多くあるようですが、庭植えで栽培できるものを教えてください。
- ノウゼンカズラ科の植物は、世界の熱帯及び亜熱帯を中心に約20属800種が分布していますが、日本には自生はないとされています。「ノウゼンカズラ」はノウゼンカズラ属(カンプシス、以下「C.」と略)のつる性の木本で、学名をC.グランディフロラといい、中国の中・南部原産で、日本には平安時代に渡来しました。しかし、花が橙色のものだけしかないようです。同属には、他に「アメリカノウゼンカズラ(C.ラディカンス)」があり、北アメリカ東南部が原産です。「ノウゼンカズラ」よりも花は小型で花筒部が長く、濃赤色をしていて、黄花の'フラウア'や'斑入り葉'の品種もあります。また、ノウゼンカズラとアメリカノウゼンカズラの交配種(C.×タグリアブアナ)には、'マダム・ガレン'などの園芸品種があり、日本でも数品種が育種されています。
また、ノウゼンカズラ属以外のノウゼンカズラ科のつる性の木本で、初めは温室植物として導入されたものの、耐寒力が強く、暖地の屋外で栽培できるものに、南アフリカ原産の「ピンクノウゼンカズラ(ポドラネア・リカソニアナ)」や「ヒメノウゼンカズラ(テコマリア・カペンシス)」、オーストラリア原産の「ソケイノウゼン(パンドレア・ヤスミノイデス)」などがあります。
なお、ノウゼンカズラ属の2種とヒメノウゼンカズラをさし木繁殖する場合、熟枝よりも、地表をはう緑の匍匐(ほふく)枝の方が発根しやすいことを追記しておきます。
- <写真>
ノウゼンカズラ(8月、大阪市内)
アメリカノウゼンカズラ(大阪市内)
アメリカノウゼンカズラ'フラウア'(8月、大阪市内)
ヒメノウゼンカズラ(10月、大阪府下)
ピンクノウゼンカズラ(9月、大阪市内)
ソケイノウゼン(9月、大阪府下)
ノウゼンカズラとアメリカノウゼンカズラの交配品種'マダム・ガレン'(8月、京都府下)