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みどりの相談所だより Q&A

Q31~Q40 回答:太田周作 相談員

Q31. <水草の土> 梅小路公園には、プラスチック製の樽の中に水草を植え、多数展示してありますが、どんな土を使っていますか?また、肥料は何をやっているかお答えください。
 当園での水生植物の栽培は一部を除き、ほとんどが容器栽培です。そのため、池などのような広い場所で栽培する場合と、土や肥料は異なると思いますが、当園のものに限りお答えいたします。
 当園では8〜10号の駄温深鉢に水草を植えて、1〜2回り大きめのプラスチック容器に沈めて栽培しています。水深は抽水性のもの、浮葉性のものなど、種類により差があるので、底にレンガを入れ調整しています。以上のように、容器の広さは限られていて狭く水の量も少なく、また、水換えもほとんど行わないため、最も注意しないといけないのは水の中の酸素が欠乏することです。酸欠を防ぐためには、植え込み用土は有機物の少ない砂質土が良く、実際のところ用土としては、水草の種類は問わず、1〜数回、草花用に使用した後の古土を使っています。元になる草花用の土は、真砂(まさ)土をベースとし、バーク堆肥、ピートモス、日向土(細粒)をブレンドした市販のものですが、この土に日向土の細粒をさらに5分の1くらい加え、使用しています。こうすると通水と通気がよくなり、複数回草花を植え込むことができるからです。水草には、この使用済みの土の夾雑(きょうざつ)物を除くだけで、他には何も加えず使っていますが、ハンギング用の土が混じったりすると、パーライトが浮き、見苦しくなるので混じらないように気をつけています。以前新しい土をそのまま使ったこともありますが、ピートモスが多いせいか水が濁って成績は良くありませんでした。
 肥料についてはN(チッソ)8、P(リン酸)8、K(カリ)8の化成肥料を適宜、容器の水の中に投入するだけです。有機物肥料を使うと、腐敗して酸欠になるため、使っていません。ただ、肥料当たりが起こらないように一度の投入量は少なくし、回数も調整しています。
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  • 写真:容器栽培のシラサギガヤツリ(流通名:スターグラス)
    容器栽培のシラサギガヤツリ(流通名:スターグラス)
  • 写真:古土で植え付けたミズバショウ
    古土で植え付けたミズバショウ
  • 写真:古土で植え付け中のオニバス
    古土で植え付け中のオニバス
  • 写真:水草の栽培状態。手前の開花中の植物は中国原産のハナイ(学名:ブトムス・ウンベラツス)
    水草の栽培状態。手前の開花中の植物は中国原産のハナイ(学名:ブトムス・ウンベラツス)
Q32. <アレチヌスビトハギ> 秋になると空き地や公園の外周などにこの花がたくさん咲いています。花はきれいですがどうも雑草のようです。何という植物ですか?
 この植物の和名は「アレチヌスビトハギ(荒れ地盗人萩)」といい、北アメリカ原産の帰化植物です。学名は「デスモディウム・パニキュラツム」で、マメ科ヌスビトハギ属(デスモディウム)に含まれる多年草です。この植物が日本で最初に発見された場所は大阪府下で、1940年のことでした。渡来した原因は不明で、現在は関東地方以西の荒れ地や道端に広がり、かなり多く見かけます。
 和名の意味は「荒れ地に生えるヌスビトハギ」で、日本在来のヌスビトハギ(学名 デスモディウム・オキシフィルム)と同属で、よく似ているからです。なお「ヌスビト」は、豆果(豆の入った莢=さや)の形が、泥棒が忍び足で人家に入るときの足跡のように見えるからだと言われています。両種の違いは「アレチヌスビトハギ」は豆果が3〜6節あるのに対し、「ヌスビトハギ」は豆果は2節しかなくて、切れ込みが深く、また主に山野の林下に生えるのが特徴です。この仲間は、豆果の表面に短い鉤(かぎ)型の毛が密生していて、熟すとよく衣服などにくっつく、いわゆる「ひっつき虫」の一種です。これは動物の毛などに付いて種子を広く散布する役目を担っています。
 他に「アレチヌスビトハギ」の類似種で豆果が1〜3節の「アメリカヌスビトハギ(学名デスモディウム・リギヅム)」と花の色が白い「イリノイヌスビトハギ(学名デスモディウム・イリノエンセ)」の2種がともに日本に帰化しています。
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  • 写真:アレチヌスビトハギ
    アレチヌスビトハギ
  • 写真:アレチヌスビトハギの花と豆果
    アレチヌスビトハギの花と豆果
Q33. 「コスモス」と「キバナコスモス」の区別が分かりません。花の色の違いだけではないのでしょうか?
 私たちが通常「コスモス」と呼んでいるのは、キク科、コスモス属(Cosmos、以下、C.)の一種で学名を「C.ビピンナツス」といい、和名が「アキザクラ」又は「オオハルシャギク」と名づけられたものです。一方、「キバナコスモス」は、学名「C.スルフレウス」で前者とは同科・同属ではあるものの、種が異なります。ただ両種とも1年草で、原産地も同じメキシコです。
 「C.ビピンナツス」の日本への渡来は1896(明治29)年で、草丈が2〜3mになって分枝し、葉の形は羽状に細かく切れこみ線形になります。花の色は、以前には白色・淡紅色・深紅色などでしたが、黄花の品種である'イエローガーデン'が日本で育種されて1987(昭和62)年に登録され、販売されました。その後改良されて、より黄色の部分が多い'イエローキャンパス'も市販されています。
 「C.スルフレウス」は大正初期に渡来し、草丈は1〜2mでよく分枝し、やや横に広がります。葉は前者に比べ、まばらに羽裂して、裂片は幅広です。花の色は黄色や橙色でしたが、朱紅色の品種'サンセット'が日本で育種され、1966(昭和41)年に国際園芸コンクールで、金賞を受賞しました。その後も'ディアボロ'や'サニーレッド'など、より濃色の赤色系品種が発表され、市販されています。
 上記のように、渡来して間もなく「キバナコスモス」と名づけられた「C.スルフレウス」には当時、朱紅色の花はなく、一般的にコスモスと呼んでいる「C.ビピンナツス」にも黄花は存在しませんでした。その後の改良、育種の結果、花色が豊富になったため、名前が混乱するようになったのです。
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  • 写真:コスモス・ビピンナツス 'ベルサイユ'
    コスモス・ビピンナツス 'ベルサイユ'
  • 写真:コスモス・ビピンナツス 'イエローキャンパス'
    コスモス・ビピンナツス 'イエローキャンパス'
  • 写真:コスモス・スルフレウス(キバナコスモス) 'サンライズ'
    コスモス・スルフレウス(キバナコスモス) 'サンライズ'
  • 写真:コスモス・スルフレウス(キバナコスモス) 'ディアポロ'
    コスモス・スルフレウス(キバナコスモス) 'ディアポロ'
Q34. キンモクセイは全部雄株だと教えられましたが本当でしょうか。雄株だとしたらどうしてあんなに沢山の花をつけるのですか?
 「キンモクセイ」は中国原産で常緑の小高木ですが、秋には多数の橙黄色の小さい花を束生し強い芳香を放つため、人気の高い花木で、庭木や生垣などに広く利用されています。
 植物には、同一の株に雌蕊(めしべ)と雄蕊(おしべ)をつける雌雄同株のものと、雌蕊だけの雌花しかつけない株と、雄蕊だけの雄花しかつけない株が別々となっている雌雄異株のものがあります。また、雌雄同株には、一つの花に雌蕊と雄蕊のある両性花を咲かせるものと、同じ株に雌蕊だけの花と雄蕊だけの花(単性花)を別々につける雌雄異花のものがあります。
 雌雄異株の場合、雄株ではあっても、もちろん花を咲かせます。なぜなら、雄花の花粉を昆虫に運んでもらい、雌花の雌蕊に受粉させ、種子を結ばなければならないからです。この場合、動物でも同じことですが、雄株は種子を作る負担がないのと、受粉率を高めるために雌株よりもずっと多くの花を咲かすのが普通です。また雌雄異株の植物の種子を実生栽培すると、初花は通常、雄花ばかりの雄株で、雌株は1〜数年遅れて開花してきます。
 「キンモクセイ」は雌雄異株の樹木で、中国から渡来したものです。また、花とその香りを鑑賞する花木で、果実の利用はありません。さらに挿し木繁殖が簡単です。これらを踏まえると、外国から日本へ移入する場合、最も目的にかなうのは、花が沢山咲く個体を選ぶことです。そのため、雄株が選ばれたのではないでしょうか。そして国内で次々と挿し木繁殖した結果、日本の「キンモクセイ」は雄株ばかりになったのだと考えられます。
<写真>
  • 写真:
    キンモクセイの生垣
  • 写真:キンモクセイ(オスマンツス・フラグランス v. オウランティアクス)
    キンモクセイ(オスマンツス・フラグランス v. オウランティアクス)
  • 写真:ギンモクセイ(モクセイ)(オスマンツス・フラグランス) 雌雄異株
    ギンモクセイ(モクセイ)(オスマンツス・フラグランス) 雌雄異株(雌木もあり結実する)
  • 写真:ヒイラギモクセイ(オスマンツス×フォーチュネイ)
    ヒイラギモクセイ(オスマンツス×フォーチュネイ) ギンモクセイとヒイラギとの雑種といわれる。雌雄異株だが雌木を見ない
Q35. 隣家の庭のナンテンは冬になると実だけでなく、葉も赤くなって見ごたえがあります。しかし、我が家のものは葉が緑のままで紅葉しません。どうしてでしょうか?
 通常、紅葉する木は落葉樹で、葉が落ちる前の一時期のみですが、常緑樹でありながら、冬の間ずっと葉の色が変わり紅葉するものがいくつかあります。ナンテンはその代表種といえるでしょう。
 ナンテンの葉が紅葉するかしないかは、植えてある場所や、植え方、また肥料分の多少に深く関係しています。それに、ナンテンの品種によっても異なります。
 ナンテンは本来、半日陰を好む低木ですが、日陰や半日陰などのように、ナンテンの木の上に遮蔽物がある場合は、冬になっても紅葉せず葉は緑のままです。寒風と霜が直接当たるような吹きさらしのナンテンは赤く色づきます。また、秋以降に土の中に肥料分が残っていると色づきが悪くなります。その点、鉢植え栽培などでは、春~夏の間のみ肥料を与えて、秋からは肥料をやらずにおくと、鉢土の肥料分が冬には切れてしまうため、より鮮やかに色づきます。
 以上より推察して、お隣のナンテンは吹きさらしに、貴宅は日陰に植えてあるのではないでしょうか。なお、品種的には、白い実のなるシロ(ミ)ナンテンは条件を満たしていても葉は赤くならず、黄緑になります。また、グラウンドカバーにもよく使われているオタフクナンテンは背が高くならない小低木で、開花結実もしませんが、普通種のナンテンに比べて色づきやすく、紅葉がきれいです。
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  • 写真:クスノキの下の紅葉していないナンテン(1月)
    クスノキの下の紅葉していないナンテン(1月)
  • 写真:シロ(ミ)ナンテン(1月)
    シロ(ミ)ナンテン(1月)
  • 写真:紅葉したオタフクナンテン(1月)(朱雀の庭)
    紅葉したオタフクナンテン(1月)(朱雀の庭)
  • 写真:吹きさらしで紅葉したナンテン(1月)(梅小路公園)
    吹きさらしで紅葉したナンテン(1月)(梅小路公園)
Q36. <チャイニーズハット>梅小路公園の事務所の入口に真冬だというのに朱橙色の変わった花を着けた鉢植え植物が展示されていますが、何という植物で、またどこからきたものでしょうか?
 この植物は、クマツヅラ科で、学名を「ホルムシヨルディア(以下、H.)・サングィネア」といいますが、「カロミア・サングィネア」と分類されていることもあります。ただし、通称は「チャイニーズハット」と英名で呼ばれて流通しています。花一輪の形が、中国で近代まで使われていた古い帽子に似ていることからでしょう。和名は、やはり花の形から「テングバナ(天狗花)」とつけられていますが、あまり使われていません。しかし、花の後方部分の帽子状で皿型のものは、じつは花びらではなく萼(がく)で、花びらは五裂した円筒形の部分のみです。
 原産はインドやヒマラヤの亜熱帯地方で、枝は3~5m位の長さになり、やや蔓(つる)状に伸びる性質があります。花期は11月~2月で、寒い季節を楽しませてくれます。日本では20年前の大阪花博以来、鉢花として普及し始めました。寒さにはかなり強く、暖地では十分屋外で越冬しますが、京都の市街地では冬に直接霜や寒風に当たる場所に置くと、花や葉が傷み、観賞価値がなくなりますので、梅小路公園では緑化協会事務所入口前の廂(ひさし)の下に置いています。
 花色は朱橙色のものが一般的ですが、黄色の品種もあります。しかし、少し性質が弱いようです。また青色の花弁で、マダガスカル原産の「H.テッテンシス」も流通していますが、寒さに弱く屋外では越冬できません。繁殖は、5月~6月にさし木をすれば、どれも簡単に発根します。
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  • 写真:玄関入口前のチャイニーズハットの鉢植え(1月)
    玄関入口前のチャイニーズハットの鉢植え(1月)
  • 写真:チャイニーズハットの萼と花弁(つぼみ)
    チャイニーズハットの萼と花弁(つぼみ)
  • 写真:チャイニーズハットの萼と花弁(開花)
    チャイニーズハットの萼と花弁(開花)
Q37. つぼみが着いたシャコバサボテンを、寒くなってきたので室内に入れたところ、つぼみがほとんど落ちてしまいました。寒さに当たって、傷んだのでしょうか?
 シャコバサボンテンは短日性(1日のうち夜間が一定時間以上長くなると開花する性質)のため、日が短くなった11月ごろにつぼみを着けはじめ、年末前後に開花するので、「クリスマスカクタス」とも呼ばれ、冬の鉢花として、代表的なものの一つとなっています。
 原産はブラジルの山岳地帯で、サボテン科シュルンベルゲラ属の森林性の着生植物ですが、古くから何種もの近縁種が交雑され、多くの園芸品種が育種されています。
 シャコバサボテンは、一般家庭の場合、冬を除き屋外で管理します。つぼみが着き、色づき始める頃には、気温は下がり寒くなってきますが、あわてて室内へ入れたり、置き場所を移動したりすると、つぼみは落ちてしまいます。シャコバサボテンのつぼみは環境の変化に非常に弱いからです、同じ場所で徐々に気温などが変化するのなら大丈夫ですが、場所換えなどをして温度や日照の強弱・長短が急に変わると落蕾の原因になります。そのため、寒さに当たらないように置き場所を換えるのなら、つぼみが着く前にしてください。
 また、寒さには案外強いため、つぼみが大きくなるまで屋外に置いておいても、関西地方の市街地なら、吹きさらしでない限りさしつかえはなく、つぼみが生長し、子房も含めて長さ3cmを超え、花びらが開きはじめれば、鉢を移動しても落ちることはありません。そのため購入する場合にはできるだけつぼみの大きさのそろったものを選びます。また、栽培する際も大きさがそろうように心がけてください。
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  • 写真:シャコバサボテンのつぼみ。この程度の大きさでは環境の変化によりつぼみが落ちる
    シャコバサボテンのつぼみ。この程度の大きさでは環境の変化によりつぼみが落ちる
  • 写真:見事に咲きそろったシャコバサボテン(6号鉢 12月)
    見事に咲きそろったシャコバサボテン(6号鉢 12月)
  • 写真:小さいつぼみが落ちてしまい、大きいものだけ残って開花したもの
    小さいつぼみが落ちてしまい、大きいものだけ残って開花したもの
  • 写真:花とつぼみが不ぞろいなもの
    花とつぼみが不ぞろいなもの
Q38. <イオノプシディウム>梅小路公園内のコンテナなどに植えこまれている草花の1種が冬中ずっと咲いています。栽培してみたいので名前と栽培方法について教えてください。
 その草花は秋まきの1年草で、学名を「イオノプシディウム・アカウレ」といいます。和名はまだついてなく、学名の属名である「イオノプシディウム」か、英名の「バイオレットクレス」で流通しています。原産はポルトガルで、アブラナ科の植物です。
 9月中旬に種まきをすると、11月下旬には、はやくも花を着け始めます。花期は11月~4月中旬で、開花を続けながら生育し、咲いた花は、次々と種子を結びます。小型なので、幼苗を定植するときは数株の苗を寄せて植えると、年を越した春には、草丈が5cmくらい、葉張りは10cmくらいになります。また、一度植えると、花が終わったあと抜き取って、春まきの1年草を植えておいても、秋になると、こぼれ種からたくさん芽ばえるので、施肥をすれば、一面の花畑が労せずして出来あがることがあります。もちろん別の場所に移植するのも簡単です。また、草丈が低いので、他の利用方法として、大型の鉢植えの木の下や、秋植え球根を植え付けた上に、カバープランツとして使うダブルデッカー(球根を2層に植えたり、草花を球根の上に植えつける方法のこと)にも適しています。もちろん、一般的なグラウンドカバープランツとしての利用も、極端な日陰でなければ、十分可能です。園芸店などには種子はまだ置いていないようですが、苗の方は10年くらい前から販売されているのを見かけます。
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  • 写真:スイセンとイオノプシディウムのダブルデッカー(3月撮影)
    スイセンとイオノプシディウムのダブルデッカー(3月撮影)
  • 写真:イオノプシディウムの開花株(1月撮影)
    イオノプシディウムの開花株(1月撮影)
  • 写真:スタンダード仕立てのムクゲの鉢植えのカバープランツとして利用(1月撮影)
    スタンダード仕立てのムクゲの鉢植えのカバープランツとして利用(1月撮影)
  • 写真:こぼれ種から発芽し開花した状態(3月上旬撮影)
    こぼれ種から発芽し開花した状態(3月上旬撮影)
Q39. 今までは、うどんこ病にしかならなかったアラカシの生け垣ですが、今年はそれに加えて、黄色の斑点が一面に付いています。どうすればよいですか。
 黄色の斑点が付いたようにみえる状態は「カシ類紫カビ病」という、うどんこ病菌の仲間による病気の一つで、2種の病原菌により起きるため、2つの型があるものの、症状はほぼ同じです。日本のナラ・カシ類に付く、うどんこ病菌の仲間は8種類知られていて、単に「うどんこ病」と呼ばれているのは、葉の表面に白い粉状の菌叢(きんそう=菌のむらがり)の付く、「カシ類表うどんこ病」のことです。
 「カシ類紫カビ病」は、夏に入った頃に葉の裏に白い粉状の菌叢がちらばりはじめ、やがて広がりながら褐色になり、秋には濃い紫色を帯びた褐色や黒に近い色に変って厚くなり、ビロード状を呈します。病叢は葉の裏側にありますが、葉の表からは、黄緑色に透けて見え、目立ちます。主に常緑のカシ類に付き、アラカシの他には、アカガシ、シラカシ、ウラジロガシ、ツクバネガシ、ウバメガシやスダジイにも発生します。病原菌は木に着いているもの、落ちたものを問わず病気にかかった葉で越冬し、翌年の春に感染します。なお、アラカシには葉の裏に白い菌叢のできる「カシ類裏うどんこ病」も発生します。
 うどんこ病類の予防は、被害葉をできるだけ取り除き、落葉もすぐに拾って処分することです。また防除薬には、「トリフミン水和剤」が、樹木類のウドンコ病に農薬登録されていますので、発病初期に散布すれば効果があります。
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  • 写真:カシ類紫カビ病(葉の表)
    カシ類紫カビ病(葉の表)
  • 写真:カシ類紫カビ病(葉の裏の病叢)
    カシ類紫カビ病(葉の裏の病叢)
  • 写真:カシ類表うどんこ病
    カシ類表うどんこ病
Q40. ミカンの苗木を買って鉢で育てていますが、下の方から出た枝に、ミカンと違った葉がつき、冬には枯れて落ちました。大丈夫でしょうか?
 これは接ぎ木の台木から芽が出たもので「台芽」といいます。ミカン(ウンシュウ)に限らず、通常、果樹の苗はほとんどが接ぎ木苗です。実生(種子をまく)から育てると、親木と同じ品質の実にならずに先祖返りや交雑のため、果実の劣化が起きるからです。特にウンシュウミカンは種子ができることはめったにないため、栄養繁殖しか方法はありません。接ぎ木繁殖の場合、根のついている方を台木といい、接ぐ方を穂木といいます。カンキツ類(ミカン科の果樹)の台木としては、カラタチ(キコク)やユズなどが使われますが、現在は主にカラタチを使用します。カラタチは台木として養成しやすいばかりでなく、寒さや土壌病害虫にも強いうえ、矮化台といって、木が小型に育つため収穫が楽で、おまけに実を着ける年齢も早くなるからです。
 カラタチは中国原産で、古い時代に日本に渡来し、刺(とげ)が鋭いため、生け垣によく使われましたが、今は接ぎ木用の台木としての利用が中心です。ただ、カンキツ類は常緑樹ですが、カラタチは落葉樹なので、冬に葉が落ちるのは当たり前で、台木としては差し支えありません。ただしそのまま残しておくと、せっかくの根からの養分を奪って伸び、穂木のミカンの生長が衰えるため、見つけしだい台芽は切り除いてください。
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  • 写真:切り口の左下の台木のカラタチから芽が出ている状態。右側の直立した主枝は穂木のウンシュウミカン(9月撮影)
    切り口の左下の台木のカラタチから芽が出ている状態。右側の直立した主枝は穂木のウンシュウミカン(9月撮影)
  • 写真:台芽のカラタチが落葉している状態(1月撮影)
    台芽のカラタチが落葉している状態(1月撮影)

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