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みどりの相談所だより Q&A

Q41~Q50 回答:太田周作 相談員

Q41. <イスノキの虫こぶ> 子どもの頃、「ヒョンの木の実」という実を採って笛にして遊びました。先日近くの公園で見つけましたが、どうも実ではないようです。いったい何でしょうか。
 これは「イスノキ」につく虫こぶです。虫癭(ちゅうえい)ともいいます。
虫こぶとは、昆虫が植物体に産卵したり、寄生したりすると、その刺激によって、植物体の一部が異常に発育をし、こぶ状になったものです。英語ではゴール(gall)といいますが、虫こぶよりも意味が広く、菌こぶなども含んでいます。どうしてこのような症状が現れるのか、まだ正確には分かっていませんが、虫側から見ると、巣や餌の確保ということになり、植物側に立つと、虫をその部分に閉じ込めて分散させない効果があるのではないかと考えられています。 様々な植物に虫こぶはできますが、特に「イスノキ」にはたくさん虫こぶができ、虫こぶのついていないイスノキを見ることはないと言ってもいいくらいです。
イスノキはマンサク科の常緑高木で、本州西南部、四国、九州に自生し、緑化樹や生垣に利用されています。イスノキに虫こぶを作るのはアブラムシ類で、現在9種を超すアブラムシが寄生して、虫こぶを作ることが確認されています。虫こぶはアブラムシの種によって、大きさも色々で、その虫特有の形を作ります。かつて子どもたちが笛にして遊んでいたのは、「モンゼンイスアブラムシ」や「イスノフシアブラムシ」などが作る大型の虫こぶで、この遊びは、全国各地で見られました。また、「ヒョンノキ」の異名は、この笛の「ヒョウヒョウ」と鳴る音に基づくと言われています。
<写真>
  • 写真:イスノタマフシアブラムシの虫こぶ(右)とイスノキの果実(左)
    イスノタマフシアブラムシの虫こぶ(右)とイスノキの果実(左)
  • 写真:イスノフシアブラムシの虫こぶ
    イスノフシアブラムシの虫こぶ
  • 写真:モンゼンイスアブラムシの虫こぶ
    モンゼンイスアブラムシの虫こぶ
  • 写真:ヤノイスアブラムシの虫こぶ
    ヤノイスアブラムシの虫こぶ
Q42. ツバキの葉に白い斑点がいつの間にか入るようになりました。知人に「これは斑(ふ)入りと言って園芸上価値がある」と聞きましたが、本当でしょうか?
 残念ですが、これは「斑入り」と呼ばれているものに似てはいますが、本来の斑入りではなく、園芸上の価値もありません。この症状は「ツバキ斑葉病(はんようびょう)」というウイルスによって起こる病気のため、かえって価値は下がると言えるでしょう。
植物がウイルスに侵されると、葉や茎などに不鮮明なモザイク模様がよく現れますが、ツバキやサザンカ、チャなどがなる「ツバキ斑葉病」では、不規則ではありながら、斑(ふ)は鮮明な白色や黄白色をしていて、若葉の頃から老化するまで色あせしないのが特徴です。また、すべての葉がモザイクになるわけではなく一部の枝や葉に現れ、健常な緑色の葉も残っています。葉のみではなく花にも症状が出ることがあり、花びらに濃淡の斑を生じ、特に赤花の品種では、赤色が一部退色し、絞り模様になったりします。
この病気にかかったからといって、木が弱って枯れることはありませんが、もともと樹勢の弱い品種の場合は、よりダメージを受けるようです。なお、ツバキには、葉緑素の欠乏が原因である本来の斑入り葉のものが10品種を超してありますが、これらはすべて斑が規則正しく入るため、斑葉病とは簡単に見分けることができます。
斑葉病についてはまだよく分かっていないことが多く、予防や防除の方法も不明です。ただし、罹病(りびょう)した株の枝を採って、挿し木や接ぎ木などの栄養繁殖に使うのは避けてください。
<写真>
  • 写真:「ツバキ斑葉病」に罹病したツバキの葉
    「ツバキ斑葉病」に罹病したツバキの葉
  • 写真:「ツバキ斑葉病」に罹病したツバキの葉(花は菌核病にかかっている)
    「ツバキ斑葉病」に罹病したツバキの葉(花は菌核病にかかっている)
  • 写真:「ツバキ斑葉病」に罹病したカンツバキ
    「ツバキ斑葉病」に罹病したカンツバキ
Q43. <ヒメリュウキンカ> 団地の樹木の下の何もない地面に、秋になると丸い葉がいっせいに出て、2~3月には一面に花が咲きます。名前がわからないので教えてください。
 この植物は日本原産ではなく、西ヨーロッパから西アジア、北アフリカに分布し、塊根(かいこん)を持ち、夏は葉がなくなる冬緑性の多年草で、キンポウゲ科のキンポウゲ属(ラナンクルス。以下R.と略)に含まれ、一般的に単にラ(レ)ナンキュラスと呼ばれているハナキンポウゲ(R.アジアティクス)の仲間です。学名は「R.フィカリア」といいますが、「ヒメリュウキンカ」と名付けて流通しています。ただし、リュウキンカは同じキンポウゲ科ですが、属は異なり、リュウキンカ属(カルタ)に分類されます。一見よく似ていて、リュウキンカの小型のような草姿をしているものの、湿地性のリュウキンカに比べ、湿地からやや乾燥した場所まで幅広く栽培できます。品種によりやや異なりますが、ご質問のように5月中旬から10月始め頃まで葉がなくなりますので、裸地と間違って、他の植物を植えたり、土を掘り上げたりしないように注意しましょう。性質はいたって強健で、塊根が次々伸びて1年で3~5倍に増えます。繁殖は、株分け以外に根茎伏せもでき、実生も採りまき(※1)すれば秋頃に発芽します。また、変異の多いこともこの植物の特徴で、花色や花型、葉の形の異なるたくさんの園芸品種があるため、日本の山野草の栽培趣味家にも人気があり、古典園芸植物(※2)並みに蒐集(しゅうしゅう)して鉢植え栽培をしている方もいるようです。

(注)
※1 採りまき......採取した種子をすぐにまくこと。 
※2 古典園芸植物......主に江戸時代に国内で育種または改良、蒐集された園芸植物の総称。

<写真>
  • 写真:ヒメリュウキンカの群生(3月撮影)
    ヒメリュウキンカの群生(3月撮影)
  • 写真:ラナンキュラス・アジアティクス(ハナキンポウゲ)の小型系品種
    ラナンキュラス・アジアティクス(ハナキンポウゲ)の小型系品種
  • 写真:ヒメリュウキンカの園芸品種'アルプス'
    ヒメリュウキンカの園芸品種'アルプス'
  • 写真:ヒメリュウキンカの園芸品種'グリーンペタル'
    ヒメリュウキンカの園芸品種'グリーンペタル'
  • 写真:ヒメリュウキンカの園芸品種'ボウレス'
    ヒメリュウキンカの園芸品種'ボウレス'
  • 写真:ヒメリュウキンカ(品種不明)
    ヒメリュウキンカ(品種不明)
Q44. ウメの花が終わり、新しい芽が伸びだしましたが、いつの間にか葉が次々とねじれるようになりました。どうしてでしょうか?
 これはアブラムシの一種である「スモモオマルアブラムシ」による被害です。このムシは、1.5mmくらいの大きさで、淡緑色をしています。卵で越冬した後、4月には孵化(ふか)し、新しい葉の裏に群がって、樹液を吸います。そのため、被害を受けた葉は不規則に変形して裏面に巻き込みます。本来、次々と伸びて広がる葉は、このムシの被害のため、縮んでしまい、枝の伸長も悪くなってきます。
しかし、7月中旬になると全くムシはいなくなり、その後に出る葉は正常になります。結果的に枝の基部に近い葉は縮み、先の方は正常葉がついた状態となります。ムシがいなくなる理由は、中間宿主(2種以上の宿主を必要とする生物が最終の宿主以前に寄生する生物)のキク科の植物に移住するからです。このムシの別名は「ムギワラギクオマルアブラムシ」ですが、これはムシの学名に基づいて付けられていて、キク科の害虫でもあるからなのです。なお、「ムギワラギク」とは、オーストラリア原産のキク科の1年草で、「ヘリクリサム」とか、「テイオウカイザイク」の名で流通している草花です。
 中間宿主に移って夏を越したこのムシは、10月には、大部分が、またウメなどに帰ってきて、卵を産み、越冬します。防除剤には「マラソン乳剤」や「スミチオン乳剤」などが登録されているので、発見次第散布してください。葉が巻いてからでは、効果がかなり落ちます。
 見苦しい葉のついた枝の部分は、果実の収穫後の6月の剪定時に切り取ればよいでしょう。ただし、あまり切りすぎると翌年の花や実が少なくなります。

<写真>
  • 写真:スモモオマルアブラムシにより変形したウメの新葉(5月中旬)
    スモモオマルアブラムシにより変形したウメの新葉(5月中旬)
  • 写真:変型のようすを拡大したもの
    変型のようすを拡大したもの
  • 写真:巻き込んだ葉をナイフで切り裂いた状態(中にムシがいる)(5月中旬)
    巻き込んだ葉をナイフで切り裂いた状態(中にムシがいる)(5月中旬)
  • 写真:剪定後のウメの木(6月上旬)
    剪定後のウメの木(6月上旬)
Q45. トキソウの花が大好きなので、栽培しようと考えています。野生ランなので難しいとは聞いていますが、コツがあれば教えてください。
 トキソウは日本全国の日当たりのよい湿地に生えるラン科の夏緑性の多年草です。直立した茎の高さは10~30cmですが、通常の葉は1枚しか付きません。地下部は根茎が横に這(は)い、やや硬くはありますが、あまり太くならないため、根との区別が困難です。この根茎から4月下旬ごろに葉を出して伸び、5月下旬ごろには茎の先端にトキ色の花をつけ、風にそよぐ姿は風情のあるものです。なお、白色の花をつける品種もあって、それぞれの美しさがあります。花が終わった後、残っていた葉は11月に入ると枯れてしまいます。
 栽培はそれほど難しくはなく、当公園ではほとんどサギソウと同じ方法で栽培しています。株分けと植えつけは、11月~3月の葉のない頃なら、いつでも行えますが、3月が最適でしょう。古い植え込み材料を取り除き、根を傷めないようにして、根茎を分け、植えつけます。当公園では6号前後の浅鉢に、日向土(ボラ)の細粒で植えつけ、上面に水苔を張ります。水苔単用の場合は、水苔が腐るため毎年植え替えが必要ですが、これなら2年に1度でも十分です。植え込みが終わると、日当たりのよい場所で、1年中腰水に漬けていますが、鉢の3分の1より深く漬けない方がよいでしょう。肥料を施せば花付きはよくなるものの、茎が長くなって見苦しく、また、倒れやすくなるので、控えめにしてください。

<写真>
  • 写真:トキソウの開花(6号浅鉢)
    トキソウの開花(6号浅鉢)
  • 写真:トキソウ(白花)の栽培状態
    トキソウ(白花)の栽培状態
  • 写真:トキソウの花(トキ色の普通色)5月
    トキソウの花(トキ色の普通色)5月
  • 写真:トキソウの花(白花)5月
    トキソウの花(白花)5月
  • 写真:トキソウの根鉢(根茎と植え込み材料)・下は日向土の細粒・上面約1cmは水苔
    トキソウの根鉢(根茎と植え込み材料)
    ・下は日向土の細粒
    ・上面約1cmは水苔
Q46. <ミッキーマウスノキ> 緑化協会の玄関に面白い形をした実を付けている鉢植えの植物がありますが、名前と栽培方法を教えてください。
 この植物は英名で「ミッキーマウスプランツ」といい、通称は「ミッキーマウスノキ」と呼ばれています。南アフリカ東部原産のオクナ科の低木で、学名は「オクナ・セルラタ」といいますが、実の形を見ると、どことなくミッキーマウスの顔に似ているので、このような名前がつけられたのです。
 栽培はいたって簡単で、日当たりと水はけを好み、また、冬の寒さにも強く、当公園では導入以来6年目になるものの、ずっと鉢植えで屋外栽培を続けています。特に寒さの厳しかった2009年度の冬(最低気温-6℃)でも問題はありませんでした。もともと常緑樹で、温室栽培では葉は落ちませんが、屋外では冬に落葉するものの、4月末から5月になると、新葉と花芽が同時に出て、黄色い花が一面に咲き、見応えがあります。このように、本来常緑樹なのに、寒さに当たると葉を落とし、春が来ると葉が出るとともに一斉に花をつけ満開になる花木に、ナス科で、ブラジルとアルゼンチン原産の「ニオイバンマツリ(ブルンフェルシア・アウストラリス)」があります。これは日本への渡来が、明治時代の末のため、暖地ではよく庭植えされているのを見ますが、「ミッキーマウスノキ」も、もっと普及すれば庭植えが主流になるでしょう。
 なお、日本におけるオクナ属の他の植物は、他に東アフリカ原産の「オクナ・カーキー」の栽培を見ます。主に温室栽培で、前種に比べ、少し寒さに弱いようです。なお、繁殖方法は2種ともさし木か、実生が行われています。実生は果肉を除いた後、取り播きしますが、シイナ(果実の中で種子がないか、稔っていないないもの)が多いので、よく確かめて播いてください。

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  • 写真:ミッキーマウスノキ(オクナ・セルラタ)の開花(5月上旬)
    ミッキーマウスノキ(オクナ・セルラタ)の開花(5月上旬)
  • 写真:ミッキーマウスノキ(オクナ・セルラタ)の果実(6月中旬)
    ミッキーマウスノキ(オクナ・セルラタ)の果実(6月中旬)
  • 写真:オクナ・カーキーの開花
    オクナ・カーキーの開花
  • 写真:オクナ・カーキーの果実
    オクナ・カーキーの果実
  • 写真:ニオイバンマツリの開花(5月)
    ニオイバンマツリの開花(5月)
Q47. 植物園の池の側に「グンネラ」という巨大な葉の植物が展示してあって、興味がわきました。個人でも栽培できますか?
 結論からいいますと、3平方メートル前後の栽培場所があり、多少の工夫をすれば、一般家庭でも栽培は可能です。「グンネラ(以下G.)」はアリノトウグサ科の多年草で、植物園等で栽培している大型種のほとんどは「G.チンクトリア」です。和名は「コウモリガサソウ」で、チリ~コロンビアの原産です。またブラジル南部原産で前種よりもさらに大きい「G.マニカタ(和名:オニブキ)」も、稀に栽培されています。  当協会では「G.チンクトリア」を2007年に実生したものが1株残っているので、これまでの栽培経験をお伝えします。参考にして下さい。

 2007年4月1日に、6号鉢に刻んだ水苔を詰め、その上に種をまき、腰水をして、寒冷紗(かんれいしゃ)を張った所に置きました。5月に入ると発芽が始まり、その後の1ヵ月くらいの間に9本の発芽苗を見ました。しかし、梅雨明けと共に苗の元気がなくなって盛夏には立ち枯れも起き、秋には3本になっていました。9月下旬に、これらを4号鉢に水苔単用で植え、冬はそのまま寒冷紗の下でしたが、葉は傷んだものの無事越冬し、翌年(2008年)4月に化成肥料を与えるとぐんぐん生長し、6月には7号鉢に日向土(ボラ)の細粒で植え、上部は水苔で被いました。順調に生長していたので、7月に桶に入れ、鉢の半分くらいを漬けて、樹陰を選んで展示しました。8月になって、葉が急に枯れ出したので、急いで元の場所に戻したものの2株は枯死しました。腰水が深かったのだと考えられます。
 残った1株は秋になって回復しだし、翌年(2009年)5月に10号鉢に草花用の培養土で植えつけ、モルタル用の練り舟の中に入れ、現在に至っています。腰水はずっと注ぎ足すのみで、流水は使わず、施肥は4~6月に2~3度、9~10月に1~2度化成肥料を与えています。夏と冬とは葉は傷むものの、一年中、屋外の寒冷紗(かんれいしゃ)下の練り舟で、クリンソウやヒメシャクナゲ、ヒメワタスゲと同居しています。本年(2010年)も生長はよく、7月現在で、葉張り1m、草丈0.8mになりました。昨年の秋に、初めて花穂が見えかけたと思ったら、すぐに止まってしまったので、今年の秋を楽しみにしています。

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  • 写真:大阪花博での「G.チンクトリア」の開花(1990年5月)
    大阪花博での「G.チンクトリア」の開花(1990年5月)
  • 写真:オランダのキューケンホフ公園の「G.チンクトリア」(1999年5月)
    オランダのキューケンホフ公園の「G.チンクトリア」(1999年5月)
  • 写真:「G.チンクトリア」の発芽苗(2007年7月)
    「G.チンクトリア」の発芽苗
    (2007年7月)
  • 写真:当協会の実生の「G.チンクトリア」(2010年7月)
    当協会の実生の「G.チンクトリア」(2010年7月)
Q48. 梅小路公園に、北海道で見た「ハマナス」にそっくりの花が咲いています。もし「ハマナス」だったら、どうして京都で育つのですか?
 梅小路公園には数株の「ハマナス」が植えてあり、5~8月には花をつけています。「ハマナス」はバラ科バラ属(ロサ)の落葉低木で、学名を「ロサ・ルゴサ」といいます。「ハマナス」と聞けば、すぐ北海道、しかも知床のイメージが強いのですが、これは「知床旅情」という歌の影響によるものです。分布は東アジアの温帯、亜寒帯で、日本には、北海道と周辺の島、及び本州の日本海側では鳥取県以北、太平洋側では茨城県以北に自生しています。
 「ハマナス」には、標準色の桃色以外に、赤紫色、白色などの花があり、それぞれに八重咲きがあります。また、19世紀にヨーロッパに渡って、園芸バラと交配され、多数の品種ができ、ルゴサ系と称されています。
 暖地である京都で生育する理由ですが、もともと「ハマナス」は、海岸に自生するため、案外暑さに強く、かなり以前から、暖地でも鉢植え栽培が行われていました。しかし、各地で多く植栽されるようになったのは、ノイバラなどを台木とした接ぎ木苗の流通開始以後です。地上部の穂木は寒地性の「ハマナス」でも地下の根系は暖地性の台木のため、暑さに強くて、栽培が容易になったのです。同じような例に、イボタの台木に接いだライラックがあります。このように接ぎ木することにより、本来寒地性で、長い夏の暑さを嫌う植物でも暖地で栽培されるようになりました。因みに、園芸バラの流通苗はほとんどが接ぎ木です。これは、耐暑性のみでなく、耐病性、生長、発根力、繁殖効率など、さし木繁殖に比べ多くの利点があるからなのです。

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  • 写真:「ハマナス」(桃色八重)梅小路公園(6月)
    「ハマナス」(桃色八重)
    梅小路公園(6月)
  • 写真:「ハマナス」の開花(赤紫色一重)梅小路公園(6月)
    「ハマナス」の開花(赤紫色一重)
    梅小路公園(6月)
  • 写真:「ハマナス」の花(白花一重)梅小路公園(7月)
    「ハマナス」の花(白花一重)梅小路公園(7月)
  • 写真:「ハマナス」の結実梅小路公園(8月)
    「ハマナス」の結実
    梅小路公園(8月)
Q49. 食虫植物展に行ったところ、「フクロユキノシタ」という植物が鍵のかかったケースに入っていました。さぞ、貴重なものでしょうね。
 「フクロユキノシタ」の学名は「ケファロツス・フォリクラリス」といい、ケファロツス科の多年草で、1科1属1種の食虫植物です。原産は西オーストラリアの限られた地域で、自生状態では非常に希少な植物の1つです。
かつては園芸界でも栽培が難しいこともあり、食虫植物マニアの垂涎(すいぜん)の的でしたが、今では安価でかつ容易に手に入るようになりました。バイオテクノロジーの発達により、栽培しやすい個体を選抜し、それを組織培養して大量に増殖するようになったからです。
 ただ、栽培が楽になったといっても他に比べるとやはり難しいところがあります。当協会では2006年7月に2鉢の株を導入し、栽培を続けているので、今までの経過をお伝えします。

 購入鉢はピートモス単用で植えてあったため、盛夏にもかかわらず、すぐに根鉢をふるい水苔単用で4号鉢に植え替えました。ピートモスのみで植えた株は腰水すると高温時に枯死することが何度かあったからです。また雨に当ててはいけないと聞いていたので、横窓の開いたビニールハウスに入れ、鉢皿を敷いて乾燥を防止しました。ハウス内の最高温度は40℃を超すにもかかわらず、順調に根付き、冬も窓を閉めた同じハウスに入れたままで、最低温度は-5℃にもなりましたが、特に傷むことなく越冬しました。この年(2007年)も、ずっとハウスに置きっぱなしで、水は切らさず、肥料はやらず、という単純管理のみでした。
 すると、年を越した2008年2月に2鉢とも花茎を伸ばしはじめ、3~4月の間、開花しました。しかし、種子は結びませんでした。ところが、開花後、株は急激に衰え出し、6月には地上部は2株とも枯れてしまいました。
 枯死したものと諦めていたところ、9月に小さい葉が出ているのが確認できたので、今までと同じ管理を続けていると、1鉢は徐々に回復して捕虫嚢(ほちゅうのう)を付けはじめ、現在(2010年8月)では、開花前よりも全体的に小振りながら、数芽に分かれています。ただし、もう1鉢は小さい芽のような2枚の葉があるのみで、開花より2年も過ぎたのに一向に回復しません。
 以上の経験を踏まえ、花茎が出だしたら、すぐに摘み取れば、株の衰弱を防げるものと推察できます。

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  • 写真:水苔に植え替えて10カ月後の「ケファロツス」(2007年5月)
    水苔に植え替えて10カ月後の「ケファロツス」(2007年5月)

    写真:「ケファロツス」の花茎の先端の拡大写真(2008年3月)
    「ケファロツス」の花茎の先端の拡大写真(2008年3月)
  • 写真:「ケファロツス」の開花花茎の長さは約20cm(2008年3月)
    「ケファロツス」の開花
    花茎の長さは約20cm(2008年3月)
  • 写真:食虫植物展で展示中の「ケファロツス」(2010年8月)
    食虫植物展で展示中の「ケファロツス」(2010年8月)
  • 写真:開花後2年を過ぎてやっと回復した「ケファロツス」の現状(2010年8月)
    開花後2年を過ぎてやっと回復した「ケファロツス」の現状(2010年8月)
Q50. 園芸店に「サルオガセモドキ」という藻(も)のような植物が吊り下げられ、霧をかけるだけで育つと聞きました。本当でしょうか。
 その植物は、北アメリカ東南部からアルゼンチン中部に分布しているパイナップル科のティランジア属(以下、「T.」と略)に含まれる多年草で、英名を「スパニッシュモス」、学名を「T.ウスネオイデス」といい、「サルオガセモドキ」は和名です。葉は糸状で、長さ3~6cm、径が1mmくらいです。葉の表面は灰白色の鱗片(りんぺん)で被われ、これにより空気中の水分を取り込んで吸収するため、根はありません。葉の長さや鱗片の色には個体差があり、少しづつ違います。1個体分の葉の数は数枚以内ですが、次々と増殖して連なり、ぶら下りながら房状になります。長くなると風などで切れて飛び、一部が他の木などに移ります。いろいろなものに着生し、電線に着くと自生地では重みで電線をたわめたり、切ることもあるそうです。
 筆者は10年前から大阪市内の自宅のベランダで「サルオガセモドキ」を栽培しています。この植物は、かなり標高の高い所まで分布するので、耐寒力が強く、屋外での越冬が可能です。管理らしい管理はせず、他の植物を植えた吊り鉢や、ベランダの手すりにひっかけ、周りの植物に水をやる時、ついでに全体を濡らすのみで、肥料は一切与えていません。しかし、ここ10年で5~6倍の量になりました。4年前からは、毎年8~9月になると花も着けます。関西地方の市街地では、こんな簡単な方法で育ちますので、ぜひ試してみてください。
 なお、和名の「サルオガセモドキ」は「サルオガセ」に似ているという意味ですが、形状は似ていても「サルオガセ」は菌類と藻(そう)類とで成る複合生物である地衣類なので、もちろん、花を着けることはありません。
ティランジア属には、400種以上が確認されていて、大きさや形状は様々です。その中で、根はあっても葉から水分を吸収する率の高いものが「エアプランツ」と総称され、流通しています。
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  • 写真:筆者自宅のサルオガセモドキの栽培状態(左は葉の長さ3~4cm、右は葉の長さ5~6cm)
    筆者自宅のサルオガセモドキの栽培状態(左は葉の長さ3~4cm、右は葉の長さ5~6cm)

    写真:T.ストレプトフィラ(メキシコ、ホンジュラス産)
    T.ストレプトフィラ(メキシコ、ホンジュラス産)
  • 写真:サルオガセモドキの花(9月、筆者自宅)
    サルオガセモドキの花(9月、筆者自宅)

    写真:鉢花として流通するT.キアネア(エクアドル産)
    鉢花として流通するT.キアネア(エクアドル産)

    写真:T.ブツィー(メキシコ~コロンビア、西インド諸島原産)
    T.ブツィー(メキシコ~コロンビア、西インド諸島原産)

    写真:「エアプランツ」各種の展示状態(大阪市「咲くやこの花館」)
    「エアプランツ」各種の展示状態(大阪市「咲くやこの花館」)

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