「京のみどり」情報:市民のみなさんとともに京都の緑を育てていく広報誌です。

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みどりのウォーキングマップ

森について学び遊ぶ場所 宝が池公園周辺のみどりを歩く

新宮神社~涌泉寺~松ヶ崎大黒天~宝が池公園

高野川が東に流れ、古くから景勝地として知られる松ヶ崎。西山、林山、東山と西から東へ並ぶ松ヶ崎山は、その山容から「虎の背中」と呼ばれ、五山の送り火では西山、東山に「妙」、「法」がともります。山の麓は、かつて田園地帯でしたが、水不足が深刻で、江戸時代中期に、灌漑用のため池として宝ヶ池がつくられました。宝ヶ池を中心に、京都市唯一の広域公園である宝が池公園が広がっています。1961年、国立京都国際会館の建設をきっかけに、施設整備が大幅に進み、周辺の自然林を生かした「子どもの楽園」、「憩いの森」、「桜の森」、「野鳥の森」が次々に整備されました。今では、四季折々の自然を満喫できる市民の憩いの場所となっていますが、近年、ほかの山と同様に、シカの食害やナラ枯れなど多くの問題を抱えています。日差しが厳しいなか、木陰に身を寄せて、身近な自然に起きている状況に目を向けてみませんか。

map.jpg(←クリックするとPDFが立ち上がります。)

林山の麓に佇む地域の産土神(うぶすながみ)

新宮神社(しんぐうじんじゃ)

猿田彦神を主神とする旧松ヶ崎村の産土神。以前は大比叡大明神と称したが、1307(徳治2)年、熊野新宮よりイザナギノミコト、イザナミノミコトを勧請し、新宮大明神と改称。日蓮の孫弟子にあたる日像上人の書いた法華経と曼荼羅を合祀し、妙泉寺の鎮守として敬われてきた。明治維新の廃仏毀釈神仏分離で白髭神社と称し、1887(明治20)年、新宮神社と改めた。10月末の日曜日には例大祭が行なわれる。

●京都市左京区松ヶ崎林山34
☎075-791-0191
終日参拝可能

新宮神社.jpg

鳥居の横のモミの大木は区民の誇りの木

妙・法の字を灯す日蓮宗の寺院

涌泉寺(ゆうせんじ)

918(大正7)年に、妙泉寺と本涌寺が合併して成立した日蓮宗の寺院。現在地にあった本涌寺は、1574(天正2)年、日生上人が日蓮宗の学徒を養成するために設けた学室で、松ヶ﨑檀林と称した。妙泉寺は、現在の松ヶ崎小学校の位置にあり、天台宗歓喜寺という名の寺院であったが、当時の妙泉寺住職実眼上人が、日像上人に帰依して日蓮宗に改宗し、妙泉寺と改めた。毎年8月15、16日、境内では、松ヶ﨑題目踊り(重要無形民俗文化財)が行なわれ、16日のお盆の送り火には、「妙法」の二文字が松ヶ崎の西山と東山に燃やされる。

●京都市左京区松ヶ崎堀町53

涌泉寺.jpg

本堂は、往時の檀林の講堂がそのまま転用されたもの。京都市指定有形文化財

都七福神札所 松ヶ崎の大黒さん

松ヶ崎大黒天(妙円寺)

1616年(元和2)年に日英上人の隠居所として建立され、後に帰依した松ヶ崎の住民たちが檀家となり寺となったと伝わる日蓮宗の寺院。伝教大師の作で日蓮聖人が開眼したものといわれ京都・都七福神のひとつ大黒天を祀ることから、「松ヶ崎の大黒さん」として親しまれている。京都の表鬼門に位置するところから、大黒天は古来、福運を授ける神と信じられ、広く信仰を集めた。1969年の火災で無事だったことから「火中の大黒さま」と呼ばれる。正月初子の日、2ヶ月に1度の甲子大祭には多くの参詣者で賑わう。

●京都市左京区松ヶ崎東町31
☎075-781-5067/9:00〜16:00

松ヶ崎大黒天.jpg

本尊の大黒天が祀られている本堂前には「なで大黒」が置かれている

宝が池公園

公園のほぼ中央にある宝ヶ池を中心として、雑木林や草原、河川など、昔からの地形や自然を利用して整備された開園面積約62.7haの広域公園。春には「梅林園」のウメや、「桜の森」や園路沿いのヤマザクラが美しく咲き誇り、コバノミツバツツジがピンク色に林内を染める。夏には「菖蒲園」でハナショウブが咲き、長代川付近ではホタルも見られる。秋には「子どもの楽園」のモミジバフウの紅葉、冬には池に訪れる水鳥と、四季折々の自然を身近に感じられる場所。
 公園の東部分にある「子どもの楽園」は、2008年にリニューアル。緑化協会は子どもたちに自由なあそびを創出する「宝が池プレイパーク」事業を楽園内のプレイパークゾーンで行ない、自然の中で子どものあそびを育み、世代を超えてあそびや地域の文化が伝わる拠点づくりを行っている。

宝が池公園  ☎075-882-7019(京都市北部みどり管理事務所)
子どもの楽園 ☎075-781-3010(緑化協会 宝が池公園子どもの楽園管理事務所)

宝が池公園.jpg

水際にはアヒルやサギ、コイが集まり、のどかな時間が流れる

平安騎馬隊

1921(大正10)年、京都府警察に騎馬警官が配置され、昭和初期には約50人の騎馬警官が活躍した。しかし、戦後、急速な近代化により、騎馬警官は消滅。1993年、平安遷都1200年記念事業として、1994年に京都競馬場を活動拠点に、京都府警察平安騎馬隊が復活。1997年、宝が池公園の「憩いの森」に施設が整備され、活動拠点が移された。現在は、小学校の通学路などでの騎馬パトロールや、葵祭や時代祭での雑踏警備、交通安全パレードなどに出動。全国の警察本部で騎馬隊があるのは、警視庁(東京)と京都府警だけ。厩舎には愛宕や、大文字など、山の名が着いた馬が6頭いる。厩舎見学は自由で、体験騎乗(要予約)もできる。

◆厩舎見学 10:00〜16:00
◆体験騎乗 

休み:土、日、祝日、年末年始 対象:3歳~小学3年生 人数:10~50人 申込み方法:要予約☎075-451-9111(京都府警察本部 地域課 騎馬隊)

騎馬隊.jpg

馬場で調教をする様子などが見学できる。騎乗するのは本物の警察官

★道案内★

「妙法」の眼下から水路に沿って北へ

 地下鉄烏丸線松ヶ崎駅を降りると、北山通に出ます。通りの植樹ますは、2007 年に発足した「北山フラワーストリート」の活動によって彩りよく花が植えられ、一体感のある景観が生まれています。
 宝が池公園スポーツ広場を目印に、細い道を通り抜けると見えてくる新宮神社は、松ヶ崎の産土神で、古くから地域の人々に慕われてきました。少し離れて神社の奥を見てみると、大木が多く、黄緑色のモコモコとした樹冠が特徴的なシイが目立つのがわかります。
 賑やかな声が聞こえてくる松ヶ崎小学校を過ぎ、なだらかな坂を上がっていくと、涌泉寺の山門が見えてきます。この一帯は鎌倉時代に日蓮宗が広まり、その際、村人がお題目を唱えながら踊った「松ヶ﨑題目踊り」が、現在も毎年8月15、16日の夜、涌泉寺の境内で行なわれています。
 住宅街を抜けて、白雲稲荷神社から続く参道を上がっていくと、「松ヶ崎の大黒さん」として親しまれている松ヶ崎大黒天に到着。やわらかな笑顔の「なで大黒」が迎えてくれます。

子どもの楽園から園内をめぐる

木陰で水路沿いの涼やかな道が続き、宝が池公園東端の子どもの楽園が見えてきます。楽園内のプレイパークゾーンでは、環境学習の拠点を目指した取り組みが進められています。

 ここからは園内散策です。岩倉川に沿うように歩いていくと、憩の森の奥に平安騎馬隊の施設があります。葵祭や時代祭などで、活躍する平安騎馬隊。馬の厩舎があり、調教などが行なわれています。見学は自由で、時には公園の園路を歩く姿も見られます。
 桜の森、野鳥の森と進んでいくと、伐採木が所々で見られます。ナラ枯れの被害木で、害虫をくん蒸処理しているのです。
 梅林園の近くから、宝ヶ池を見渡すと、穏やかに水を湛える池の奥に、国立京都国際会館、比叡山が見える、ダイナミックな景色が広がっています。四季折々で見所が変わる池の周りをぐるりと歩きましょう。比叡山を近くに感じられる北園を通り抜ければ、地下鉄烏丸線国際会館駅はもうすぐです。

※この記事は2011年7月発行の「京のみどり59号」から内容を掲載しています。

冊子は協会事務所(東山区円山町463)でお配りしています。

★市民活動の紹介~もっと知りたいみどりのこと~★

宝が池公園に見る京の山の問題 

~森を利用することが、森を守る~

 近年、夏でも山が紅葉のように茶色いという光景が東山をはじめ京都市周辺で見られるのにお気づきでしょうか。これは「ナラ枯れ」といわれる現象です。燃料や食料、肥料などを得るために手入れされてきた山が放置されて40年以上。松茸山だった宝ヶ池の山もアカマツは一部に残るのみとなり、コナラなど落葉広葉樹が育ちやすい環境が広がりました。コナラも以前は十数〜20年で伐採利用され若木に更新されてきましたが、今は大木化し、次世代の木が育ちにくい環境となっています。

 ナラ枯れとは、コナラやミズナラなどブナ科の樹木に、カシノナガキクイムシ(以降カシナガ)という小さな虫が大量に住みつき、その際木の中に入る菌によって枯れてしまう現象です。カシナガは老木など樹勢が弱まった木を繁殖の場とするため、今、爆発的に増えているのです。
 ナラ枯れ研究の第一人者、京都府立大学特別講師の小林正秀さんは、カシナガを飼育して生態や枯れるメカニズムを解明し、被害を食い止めるための様々な手法を考案、実践しています。宝が池公園では今年、ナラ枯れ木の伐採、くん蒸処理が行われていますが、小林さんは被害拡大を遅らせるため安価で作れるペットボトルトラップ(写真)を考案し設置。モニタリング調査も進めています。

 一方、主に社寺林に見られたシイ林が一気に広がっている問題、シカの増殖による問題も起き、弱っている森に追い打ちをかけています。同大学講師の平山貴美子さんは、斜面での調査を通じ、シイ林化のメカニズムを実証しながら、森の多様性を維持する管理法を探っています。シイ林化は多様性豊かな植物に依存する多くの生き物に影響します。また、送り火が行われる山の風景も変貌させます。
 「根本的な解決に大切なのは、生活の中で身近な木を利用し次の世代の木が常に育つ山を維持することです。まずはナラ枯れの木を銭湯や斎場の燃料などに利用できれば」と小林さんは言います。人の利用も含めた森の生態系のバランスを取り戻すことが求められています。

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※この記事は2011年7月発行の「京のみどり59号」から内容を掲載しています。

冊子は協会事務所(東山区円山町463)でお配りしています。

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