「京のみどり」情報:市民のみなさんとともに京都の緑を育てていく広報誌です。

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新しい緑の世界へ 挑戦する人

藤田利幸さん・本物の台杉を手がける人(京都市右京区)

藤田さん大.jpg

「台杉は仕立て方や手入れ次第でさまざまな表情を見せてくれます」

 

●「丸太仕立て」と「台杉仕立て」

 京都北西部、高雄で「丸太仕立て」と「台杉仕立て」の北山杉を生産しています。台杉仕立ては、垂木(たるき)(※1)丸太の生産を目的として1200年ごろ(室町時代中期)に北山で生まれた、山地で効率よく磨き丸太を生産する方法です。
 床柱用の丸太仕立ては、一度伐採すると終わりですが、それに比べて、一本の幹から何本も伸びる立ち木を順次伐採して次の立ち木が育つ台杉仕立ては、200、300年と丸太を生産し続けることができます。
 台杉は、建築様式の変化などで垂木としての需要が少なくなり、今は主に庭園鑑賞用として生産しています。
 苗木づくりに熱心だった父とともに、高雄に適する苗を選木し、以前は何万もの苗木を挿し木で育てていました。今育成している樹齢30〜40年の北山杉は苗木から育てたものです。
 枝打ちなど手入れの回数や手法は人によってさまざまで、うちでは2年に1回。丸太用はお盆過ぎから、台杉は春から夏にかけて行っています。台杉は、将来どのような形にしていきたいのかを決めて、枝打ちや剪定をしていきます。手入れ次第で、形は自由自在。そこが面白いですね。

 

●美しい形を保ち続けるために

 20年前からは、古い台杉を原谷など他の場所から移してきて育成を始めました。樹齢数百年という希少なものもあり、私のもとに来るまで何人もの技術を施されてきたことを想うと、感慨深いです。 京北の山奥、片波川源流域一帯には、伏条台杉(ふくじょうだいすぎ)(※2)という、かなり大きな台杉が何本もあるそうです。台杉仕立ての原形なのかもしれませんね。
 一般に庭園用としては樹齢30〜40年のものが多く用いられ、古い大きな台杉の出荷先は、台杉の手入れ.jpg神社やお寺がほとんどです。移植する際には「根回し(※3)」が重要で、新しい根が出るのを待ってから移動させます。北山杉は生命力が強く順応力もありますが、場所が変わっても元気に育つよう細心の注意を払っています。
 大きな台杉は全国各地に出荷しますが、できるかぎりその後の手入れにも行っています。しっかり手入れを続けていかないと、どんどん形が崩れてしまいます。北山で長年築き上げてきたよい形を崩してしまうのはかわいそうで。台杉がどこへ行っても、私が手入れを続けることができれば美しい形を保てます。北山を離れた地でも元気な姿を保ってくれることが、なによりうれしいです。

●山の維持と技術の継承

 台杉は尾根部で、丸太用は谷筋にかけて育林をしています。山上は風が強く、一番気をもむのは台風です。防ぎようがありませんから…。これまで台風の被害を受けた木はずいぶんあります。
 そんな倒木を運び出すためにも、絶対に山に必要なのが林道です。山にどんなによいものがあっても林道がないと運び出せませんし、お客さんにも来てもらえません。林道を整備してアクセスを重視しないと、山が放置されてしまう要因にもなってしまいます。
 最近はシカの害も深刻です。成木は樹皮を剥がされてしまいますし、若い植林は食べられるので、シカ除けのネットが欠かせません。
 林道整備や獣害対策、山を維持していくためにはコストも手間もかかります。山からお金を生み出し、維持費に回していければよいのですが…。最近はなかなか難しいですね。販路拡大が重要な課題です。
 今後、藤田の台杉は一味違うなと認められるようなものを手がけていくために、日々勉強だと思っています。そして技術の継承ですね。今若い台杉は、これから何百年も生き続けます。美しい姿に維持していくための技術をしっかりと伝えていかねばなりません。私のもとには今、息子と30代の職人が2人います。台杉の手入れを教えてほしいとの依頼も多く、技術はオープンにしています。ここで得た技術をどこかで生かしてもらえれば、きっと多くの人に北山杉の魅力が伝わると思いますから。

 

用語解説

※1)垂木(たるき)
屋根の棟木から桁にかけて斜めに取り付けられる材。
※2)伏条台杉(ふくじょうだいすぎ)
御所造営の木材を切りだす御杣御料だった片波川源流域には、伏条台杉と呼ばれるアシウスギの巨木が群生している。1999年、片波川源流域は京都府自然環境保全地域に、伏条台杉群は京都府天然記念物に指定された。

※3)根回し

移植で枯れることを防ぐため、移植の前の年に木の周囲をぐるりと掘り、根鉢の大きさで根を切る。残した根の環状剥皮を行ない、埋め戻して発根を促す。

 

藤田さん小.jpg

藤田 利幸(ふじた・としゆき)さん

プロフィール

高雄地区で先祖代々技術を継承し、北山杉の生産に携わる。樹齢数百年もの台杉を扱える卓越した技術を持つ。またアカマツ林を育成し丹波マツタケを生産。京都府からの指導で試験地を設けた栽培も長年続けている。最近はリンゴやブドウなど果樹類の栽培も行っている。京都府指導林家。

 

■藤田林業■ ☎075-861-0794
住所:京都市右京区梅ヶ畑清水町7-1
http://www.fujita-ringyou.jp/

 

※この記事は2011年10月発行の「京のみどり60号」から内容を掲載しています。

冊子は協会事務所(東山区円山町463)でお配りしています。

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