花とみどりの相談所だよりQ&A
- Q. 食虫植物展に行ったところ、「フクロユキノシタ」という植物が鍵のかかったケースに入っていました。さぞ、貴重なものでしょうね。
- 「フクロユキノシタ」の学名は「ケファロツス・フォリクラリス」といい、ケファロツス科の多年草で、1科1属1種の食虫植物です。原産は西オーストラリアの限られた地域で、自生状態では非常に希少な植物の1つです。
かつては園芸界でも栽培が難しいこともあり、食虫植物マニアの垂涎(すいぜん)の的でしたが、今では安価でかつ容易に手に入るようになりました。バイオテクノロジーの発達により、栽培しやすい個体を選抜し、それを組織培養して大量に増殖するようになったからです。
ただ、栽培が楽になったといっても他に比べるとやはり難しいところがあります。当協会では2006年7月に2鉢の株を導入し、栽培を続けているので、今までの経過をお伝えします。
購入鉢はピートモス単用で植えてあったため、盛夏にもかかわらず、すぐに根鉢をふるい水苔単用で4号鉢に植え替えました。ピートモスのみで植えた株は腰水すると高温時に枯死することが何度かあったからです。また雨に当ててはいけないと聞いていたので、横窓の開いたビニールハウスに入れ、鉢皿を敷いて乾燥を防止しました。ハウス内の最高温度は40℃を超すにもかかわらず、順調に根付き、冬も窓を閉めた同じハウスに入れたままで、最低温度は-5℃にもなりましたが、特に傷むことなく越冬しました。この年(2007年)も、ずっとハウスに置きっぱなしで、水は切らさず、肥料はやらず、という単純管理のみでした。
すると、年を越した2008年2月に2鉢とも花茎を伸ばしはじめ、3~4月の間、開花しました。しかし、種子は結びませんでした。ところが、開花後、株は急激に衰え出し、6月には地上部は2株とも枯れてしまいました。
枯死したものと諦めていたところ、9月に小さい葉が出ているのが確認できたので、今までと同じ管理を続けていると、1鉢は徐々に回復して捕虫嚢(ほちゅうのう)を付けはじめ、現在(2010年8月)では、開花前よりも全体的に小振りながら、数芽に分かれています。ただし、もう1鉢は小さい芽のような2枚の葉があるのみで、開花より2年も過ぎたのに一向に回復しません。
以上の経験を踏まえ、花茎が出だしたら、すぐに摘み取れば、株の衰弱を防げるものと推察できます。- <写真>
水苔に植え替えて10カ月後の「ケファロツス」(2007年5月)
「ケファロツス」の花茎の先端の拡大写真(2008年3月)
「ケファロツス」の開花
花茎の長さは約20cm(2008年3月)
食虫植物展で展示中の「ケファロツス」(2010年8月)
開花後2年を過ぎてやっと回復した「ケファロツス」の現状(2010年8月)