花とみどりの相談所だよりQ&A
- Q. <チーゼル> 梅小路公園内で、大型の変わった植物を初めて見ました。実の形は面白いものの、花はきれいではないので、鑑賞用の草花だとは思えません。名前と用途を教えてください。
- この植物は学名を「ディプサクム・サティウス」、和名を「ラシャカキグサ」、英名を「フラーズチーゼル」と言いますが、近縁の他の一種と合わせて、一般的に「チーゼル」で通用しています。
チーゼルはマツムシソウ科の2年草で、通常4月に種を播くと、翌年の6〜7月に花をつけ、果穂(実)が乾燥する9〜10月には株全体が枯れてしまいます。しかし、なかには翌年では花をつけずに2度目の冬を越して巨大化し、3年目に花をつける株もあります。いずれにしろ花を咲かせた株は枯れてしまうので、多年草ではありません。草丈は1〜2mが普通ですが、3年目に花をつけた株は2.5m近くにもなります。
チーゼルの原産地は、ヨーロッパ、北アフリカ、中東にかけてですが、ヨーロッパなどでは古い時代から栽培されてきました。それは、長さ10〜15cmになるこの植物の円筒状の頭状花序の先端が鉤(かぎ)状に曲っているのを利用して、乾燥して硬化した果穂を、織物の起毛材として使ったからです。和名の由来もこの理由からで「羅紗掻き草」だという訳です。
今では金属性などの人工物に代わっているため、ほとんど起毛用に使うことはありませんが、まれに刺繍(ししゅう)の趣味家の利用を目にすることがあります。
現在、チーゼルの用途として最も多いのは果穂をドライフラワーに用いることで、様々に着色されたものなどが現代風の生け花材料として広く流通しています。
- <写真>
チーゼル(高さ約2.5m)
チーゼルの果穂と花(長さ約15cm)