花とみどりの相談所だよりQ&A
- Q. 園芸店に「サルオガセモドキ」という藻(も)のような植物が吊り下げられ、霧をかけるだけで育つと聞きました。本当でしょうか。
- その植物は、北アメリカ東南部からアルゼンチン中部に分布しているパイナップル科のティランジア属(以下、「T.」と略)に含まれる多年草で、英名を「スパニッシュモス」、学名を「T.ウスネオイデス」といい、「サルオガセモドキ」は和名です。葉は糸状で、長さ3~6cm、径が1mmくらいです。葉の表面は灰白色の鱗片(りんぺん)で被われ、これにより空気中の水分を取り込んで吸収するため、根はありません。葉の長さや鱗片の色には個体差があり、少しづつ違います。1個体分の葉の数は数枚以内ですが、次々と増殖して連なり、ぶら下りながら房状になります。長くなると風などで切れて飛び、一部が他の木などに移ります。いろいろなものに着生し、電線に着くと自生地では重みで電線をたわめたり、切ることもあるそうです。
筆者は10年前から大阪市内の自宅のベランダで「サルオガセモドキ」を栽培しています。この植物は、かなり標高の高い所まで分布するので、耐寒力が強く、屋外での越冬が可能です。管理らしい管理はせず、他の植物を植えた吊り鉢や、ベランダの手すりにひっかけ、周りの植物に水をやる時、ついでに全体を濡らすのみで、肥料は一切与えていません。しかし、ここ10年で5~6倍の量になりました。4年前からは、毎年8~9月になると花も着けます。関西地方の市街地では、こんな簡単な方法で育ちますので、ぜひ試してみてください。
なお、和名の「サルオガセモドキ」は「サルオガセ」に似ているという意味ですが、形状は似ていても「サルオガセ」は菌類と藻(そう)類とで成る複合生物である地衣類なので、もちろん、花を着けることはありません。
ティランジア属には、400種以上が確認されていて、大きさや形状は様々です。その中で、根はあっても葉から水分を吸収する率の高いものが「エアプランツ」と総称され、流通しています。
- <写真>
筆者自宅のサルオガセモドキの栽培状態(左は葉の長さ3~4cm、右は葉の長さ5~6cm)
T.ストレプトフィラ(メキシコ、ホンジュラス産)
サルオガセモドキの花(9月、筆者自宅)
鉢花として流通するT.キアネア(エクアドル産)
T.ブツィー(メキシコ~コロンビア、西インド諸島原産)
「エアプランツ」各種の展示状態(大阪市「咲くやこの花館」)